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黒い花崗岩に灯る一滴、プリオラートの頂で輝くレルミータ

アルバロ・パラシオスの「レルミータ」2021年は、プリオラートの急峻なスレート土壌が生む凝縮感と、繊細な緊張感が共存する銘酒です。名門の哲学、畑の個性、香りと味わいの輪郭、合わせたい料理まで丁寧に解説します。

BUDOU-LOG編集部
黒い花崗岩に灯る一滴、プリオラートの頂で輝くレルミータ

黒い岩肌に宿る静かな炎、レルミータ2021

アルバロ・パラシオスという名門が切り開いた革新

アルバロ・パラシオスは1959年、スペイン・リオハのラ・リオハ州アルファロに生まれ、1980年代以降のスペインワインを世界水準へ押し上げた立役者の一人です。ボルドー留学で培った視点を持ち帰り、伝統産地に新しい精密さをもたらしたことで知られています。とりわけプリオラートでは、1989年にオーナー・ワインメーカーとして関わった後、土着品種と急峻なテロワールの価値を世界へ示しました。

ラベルを超えて評価されるのは、畑の個性を最優先する姿勢です。高い樹齢、低収量、手仕事による選果を徹底し、果実の力だけに頼らず、土地の輪郭をそのままグラスへ写し取るスタイルが一貫しています。スペインの高級ワインを語る際、常に名前が挙がるのはそのためです。

L'Ermita 2021が映す、プリオラート最高峰のミクロテロワール

L'Ermita(レルミータ)は、プリオラートでも屈指の評価を受ける単一畑から生まれるフラッグシップです。畑はカタルーニャ州タラゴナ県のガルシア近郊、急斜面に張り付くように広がり、いわゆるリコレリャ(llicorella)と呼ばれるスレート片岩が地表を覆います。水はけが極めてよく、根は岩盤の割れ目へ深く伸び、乾いた気候の中で少量ながら凝縮したブドウを結びます。

構成は主にガルナッチャで、年によって他品種が補助的に用いられるとされています。2021年は気候的に厳しさと均整が同居した年とされ、果実の密度だけでなく、酸と張りのある骨格が期待されるヴィンテージです。醸造は極力介入を抑え、厳選したブドウを自然酵母で発酵させ、オーク樽で熟成。新樽の香りを前面に出すのではなく、木質はあくまで質感を整えるための器として用いられます。市場価格が約95,000円というのも、この畑の希少性と生産量の少なさを物語っています。

グラスの中の物語、静けさの奥で広がる多層の果実

外観は深いルビーからガーネットへ移ろう色調で、粘性は高く、グラスの内壁にゆっくりと細かな涙を残します。第一香では、ブラックチェリー、熟したプラム、ブルーベリーの黒系果実が中心に立ち、そこへスミレ、ドライハーブ、砕いた石のニュアンスが重なります。しばらくすると、リコリス、カカオ、なめし革、ほのかな焦がし香が現れ、香りは立体感を増していきます。

アタックはしなやかでありながら、すぐに濃密な果実味が広がります。中盤では、ミネラル感を伴う張りのある酸と、きめ細かなタンニンが骨格を形づくり、重厚でありながら重さに沈まないバランスが印象的です。余韻は長く、黒い果実、塩味を思わせる旨味、乾いたハーブがゆっくりと残ります。2021年は、パワー一辺倒ではなく、精緻さと緊張感が前に出やすい年と捉えられており、レルミータらしい気品がより鮮明に感じられるでしょう。

食卓を彩る料理、厚みと香りに寄り添う一皿

このワインには、香ばしさと旨味のある料理がよく合います。たとえば、仔羊のロースト・ローズマリーとニンニクの香り、和牛ほほ肉の赤ワイン煮込み、炭火で焼いた鴨胸肉・ベリーソース、さらにきのこのリゾット・パルミジャーノレッジャーノ仕上げも好相性です。

スペイン料理なら、イベリコ豚の肩ロースの低温ローストや、ラムの煮込み・ハーブ風味が特に合わせやすいでしょう。濃厚なソースよりも、肉の旨味と香りを生かした調理法が、レルミータの緊張感を損なわずに受け止めます。熟成したマンチェゴやコンテ系のハードチーズも、余韻の長さをきれいにつなげてくれます。

ガルシア近郊、リコレリャが刻むプリオラートの原風景

プリオラートはスペイン北東部カタルーニャ州、タラゴナ県内陸部の山岳地帯に広がる産地で、中心的な村の一つがガルシアです。険しい斜面、昼夜の寒暖差、夏の乾燥、そしてリコレリャと呼ばれる黒い片岩質土壌が、この地のワインに独特の張りと塩気を与えます。1990年代以降、DOQ Prioratとして国際的評価を高め、今ではスペインを代表する高級赤ワイン産地の一つに数えられています。

かつては痩せた土地として見過ごされていた斜面が、今では世界的な銘醸区として再評価されている点も象徴的です。L'Ermitaは、その変化の先頭に立ってきた象徴であり、単なる高級ワインではなく、土地の記憶そのものを瓶に封じた存在と言えるでしょう。

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BUDOU-LOG編集部