白い石灰岩の朝霧に溶ける、ムルソー2022の静かな輝き
メゾン・ルイ・ジャドのムルソー2022は、ブルゴーニュ白の王道をやわらかな果実味と石灰質の張りで描く一本です。老舗ネゴシアンの確かな造りと、ムルソー村らしいふくらみのある質感が調和し、18,000円前後の市場価格でも納得感の高い仕上がりといえます。

白い石灰岩に差す朝の光、ムルソー2022の余韻
Maison Louis Jadotの歩みが支える、ブルゴーニュの確かな背骨
Maison Louis Jadot(メゾン・ルイ・ジャド)は1859年、ボーヌで創業したブルゴーニュを代表する名門メゾンです。自社畑とネゴシアンの両輪で品質を築き上げ、コート・ド・ボーヌからシャブリ、ボージョレまで幅広い銘柄を手がけてきました。とりわけ「産地の個性を誠実に写す」姿勢に定評があり、派手さよりも精度で評価される生産者として知られています。現在ではドメーヌ・ガジェやボーヌの醸造施設なども含め、ブルゴーニュの中核的存在のひとつと位置づけられています。伝統を守りながら近代的な衛生管理と選果を徹底してきたことが、安定した評価につながっています。
Meursaultという銘柄に宿る、ふくらみと張りの均衡
ムルソーはブルゴーニュ白の中でも、ピュリニー・モンラッシェの緊張感と並び語られる銘柄です。使用品種はもちろんシャルドネで、村名ムルソーは斜面中腹の石灰質主体の土壌に由来するミネラル感と、やや粘土を含む区画から来る丸みが持ち味とされています。ルイ・ジャドのムルソーは、村内の複数区画のブドウを用い、クリュの個性を単一畑のように誇張するのではなく、村全体の輪郭を整えて表現するスタイルです。醸造は一般に発酵後、オーク樽で熟成され、樽香は控えめにまとめられる傾向があります。新樽比率を抑え、果実とテロワールの対話を優先する造りが、この価格帯でも過不足のない説得力を生んでいます。2022年は温暖な年らしい熟度が得られつつ、ブルゴーニュらしい酸も残りやすかった年とされ、ムルソーの豊かな質感が映えやすいヴィンテージです。
グラスの中の物語は、黄桃とヘーゼルナッツから始まる
外観は、淡いゴールドに麦わら色のニュアンスが重なり、若々しさの中に熟度がのぞく色調です。粘性はほどよく、グラスの内側をゆっくりと流れる脚が、2022年らしい果実の豊かさを示します。第一香では、白桃、洋梨、黄リンゴ、レモンピールが立ち上がり、次第にアカシアや白い花、砕いた石、ほのかなヘーゼルナッツが開いてきます。空気に触れると、バターを少量添えたブリオッシュや、樽由来のバニラが奥行きを与えますが、前面には出すぎません。口に含むとアタックは丸く、果実の厚みがまず広がります。中盤ではムルソーらしいふくらみのあるボディの中心に、きれいな酸と塩味を帯びたミネラルが入り、味わいに芯を通します。余韻は中程度からやや長く、ナッツ、シトラスの皮、白い花の印象が静かに残ります。力強さと上品さが同居する、いかにも村名ムルソーらしい描写といえるでしょう。
食卓を彩る料理は、焦がしバターやきのこの香りとよく寄り添う
このワインには、クリーミーさと香ばしさを備えた料理がよく合います。たとえば、ホタテのポワレに焦がしバターとレモンを添えた一皿は、果実味と酸のバランスをきれいに引き立てます。次に、鶏もも肉のソテー・きのこクリームソースは、ムルソーのふくらみと樽由来のやわらかいニュアンスと好相性です。さらに、舌平目のムニエル・ケッパーとパセリのソースは、白身魚の繊細さにワインの塩味とミネラル感が寄り添います。少し贅沢に楽しむなら、仔牛のクリーム煮や、ロブスターのロースト・ハーブバターもおすすめです。チーズであれば、コンテの熟成タイプや熟成シェーヴルが、ナッツ香と果実味を美しくつなぎます。
ムルソー村とペリエール周辺が描く、コート・ド・ボーヌの白い丘
ムルソーは、コート・ド・ボーヌの中心部、オート・コートに向かう緩やかな斜面を抱える村です。行政区はMeursaultで、北はピュリニー・モンラッシェ、南はヴォルネイに接します。村内にはLes Perrières、Genevrières、Charmesといった著名なクリマがあり、なかでもLes Perrièresは石灰岩の強い個性で知られ、しばしば一級畑の中でも特別視されます。土壌は粘土石灰質が主体で、斜面上部ほど石灰の比率が高まり、下部ではやや深い土壌が丸みを与えます。冷涼な気流と日照のバランスが良い一方、2022年のような暖かい年には熟した果実がしっかり乗り、村名ムルソーの魅力がよりわかりやすく表れます。市場価格が約18,000円という設定は、ブルゴーニュ白の相場から見ても、名門メゾンの安心感と産地の格を考えれば妥当なレンジといえます。