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深紅の尖塔が語る、ペサック・レオニャンの静かな威厳

シャトー・パプ・クレマン2020は、グラーヴの礫質土壌が生む骨格と、名門が磨いてきた精緻さが同居する一本です。カベルネ・ソーヴィニヨンを軸に、熟した果実、スパイス、杉、タバコの香りが重なり、若いうちから品格を感じさせます。

BUDOU-LOG編集部
深紅の尖塔が語る、ペサック・レオニャンの静かな威厳

深紅の塔の麓で熟す、静かな威厳

シャトー・パプ・クレマンの歩みと、ボルドー格付けの中での存在感

シャトー・パプ・クレマンは、ボルドー左岸のペサック・レオニャンを代表する歴史的シャトーのひとつです。起源は13世紀までさかのぼり、後にボルドー大司教となるベルナール・ド・グートが所有したことから、現在の名が広く知られるようになりました。近代以降はフィラディ家のもとで評価を高め、グラーヴ格付けの中でも最上位級の名門として認識されています。都市ボルドーに近い立地でありながら、格付けシャトーらしい威厳と、現代的な精度を両立させてきた点が大きな特徴です。

このシャトーは、単に歴史が長いだけではありません。畑仕事の精密さ、区画ごとの管理、醸造設備への継続投資によって、伝統を現代的な品質へと結びつけてきた存在です。宗教的・文化的な由来を持つ名にふさわしく、ワインにもどこか厳かな輪郭が宿ると語られています。

Château Pape Clément 2020が映す、礫の畑と精緻な醸造

2020年のシャトー・パプ・クレマンは、左岸らしいカベルネ・ソーヴィニヨン主体のブレンドを核に、メルローやカベルネ・フランが補完する構成です。畑はペサック・レオニャンの砂利質、粘土質、石灰質が入り混じるテロワールに位置し、日中の蓄熱と夜間の冷却が果実の成熟と酸の保全を両立させます。グラーヴ地区らしい礫の多い土壌は、ブドウの根を深く伸ばし、ワインにミネラル感と張りのある骨格を与えるとされています。

醸造は区画ごとの丁寧な選別を前提に、発酵後の熟成をフレンチオーク樽で行うスタイルです。新樽比率は高めに設定されることが多く、果実の厚みを木樽のロースト香、杉、クローブ、カカオのニュアンスが包み込みます。2020年は、温暖で成熟に恵まれた年とされ、豊かな果実味に加えて、左岸らしい張りのあるタンニンが得られたヴィンテージとして評価されています。市場価格がおよそ22,000円という点からも、グラン・ヴァンとしての完成度と熟成ポテンシャルが期待される一本です。

グラスの中の物語、黒果実と杉が折り重なる輪郭

外観は、濃いルビーレッドから深いガーネットへと移ろう色調で、グラスの縁にわずかな紫の気配を残します。粘性は中庸からやや高めで、熟度の高さを静かに示します。第一香では、ブラックチェリー、カシス、プラムなどの黒果実が前面に現れ、その奥から杉、鉛筆の芯、黒胡椒、ダークチョコレートが立ち上がります。

しばらく空気に触れると、スミレや乾いたタバコ、トリュフ、焙煎したコーヒー豆のような複雑さが開き、香りの層がより立体的になります。口に含むとアタックはなめらかで、熟した果実が厚みをもって広がりますが、すぐにミネラル感と引き締まった酸が全体を整えます。中盤では、タンニンが緻密な織物のように舌を包み、若さのある力感と優雅さが同時に感じられます。余韻は長く、カシスリキュール、スパイス、燻した木、湿った石を思わせる印象がゆっくりと残ります。若いうちから魅力的ですが、数年の熟成でより滑らかさが増すタイプといえます。

食卓を彩る料理、赤身肉と香ばしさで響き合う組み合わせ

シャトー・パプ・クレマン2020は、果実の凝縮感と樽由来の香ばしさがあるため、旨味の深い料理と好相性です。まず合わせたいのは、仔羊のロースト・ローズマリー風味です。脂の甘みとハーブの清涼感が、ワインのスパイス感と調和します。次に、牛頬肉の赤ワイン煮込み・マッシュポテト添え。長時間煮込んだゼラチン質の旨味が、しっかりしたタンニンをやわらげます。さらに、鴨胸肉のロースト・ポワヴラードソースは、果実味と香ばしさの橋渡しになり、左岸の赤に典型的な魅力を引き出します。

そのほか、きのこのソテーを添えた牛フィレのグリルや、ビーフシチューのような濃厚な煮込み料理とも合わせやすいでしょう。トリュフ、ポルチーニ、ジュの旨味を含むソースを選ぶと、ワインの奥行きがいっそう際立ちます。2020年らしい熟度を考えると、デキャンタージュで香りを開かせてから供するのが理想的です。

ペサック・レオニャンの礫土と、ボルドー市街に近い名門の風景

産地のペサック・レオニャンは、ボルドー市街の南、ガロンヌ川左岸に広がるAOCです。中心となるのはペサックやレオニャン、メリアデックではなく、実際にはペサック、レオニャン、マルティヤック、カネジャンなどのコミューンにまたがる区画で、礫質の土壌が広く見られます。シャトー・パプ・クレマンの畑もこのグラーヴの一角にあり、石の多い土壌、適度な排水性、温暖な海洋性気候の恩恵を受けています。

この地域は、赤ワインだけでなく白ワインの銘醸地としても知られますが、赤においてはカベルネ・ソーヴィニヨンの張り、メルローの丸み、カベルネ・フランの香りの高さを見事にまとめる土地柄です。ボルドー中心部から近いながら、畑に立つと都市の気配よりも、砂利の熱、湿った森の空気、ガロンヌ川の影響が強く感じられるとされます。シャトー・パプ・クレマン2020は、そのテロワールの個性を堂々と、しかし過度に雄弁ではなく語る一本です。

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BUDOU-LOG編集部