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アンデスの夕映えに染まる、マルベック・アルヘンティーノの深い鼓動

カテナ・サパータの「マルベック・アルヘンティーノ」2020は、アルゼンチン・メンドーサの高地畑から生まれる同社の象徴的な赤ワインです。家族の歴史、樹齢の異なるマルベック、精緻な醸造、そして濃密でありながら洗練された味わいを、産地背景とともに読み解きます。

BUDOU-LOG編集部
アンデスの夕映えに染まる、マルベック・アルヘンティーノの深い鼓動

アンデスの稜線に沈む赤い光、マルベック・アルヘンティーノ2020

カテナ・サパータという名門が築いた高地ワインの歩み

カテナ・サパータは1902年、イタリア移民ニコラス・カテナがメンドーサで創業した家族経営の生産者です。長くアルゼンチン・ワインの近代化を牽引してきた存在で、特に高標高のアンデス山麓におけるマルベック研究では世界的に知られています。3代目のニコラス・カテナ・サパータが1990年代以降、低収量化と区画選別を推し進め、国際市場で「アルゼンチンの上質な赤」の評価を押し上げたことは象徴的です。代表作のひとつである“アドリアンナ・ヴィンヤード”の成功も、同社がメンドーサのテロワールを科学的に掘り下げてきた姿勢を物語っています。

マルベック・アルヘンティーノに宿る、古木と高地の精密な設計

この銘柄は、アルゼンチンのマルベックを主題に据えた旗艦キュヴェとして位置づけられます。名称が示す通り、マルベックという品種の「アルヘンティーノ」たる個性を、複数の歴史的な区画で表現するワインです。主にメンドーサ州ルハン・デ・クージョのヴィステアルバや、ウコ・ヴァレーのトゥプンガート周辺など、標高の異なる畑の果実が用いられるとされ、樹齢の高い区画と若木の純度を組み合わせることで、深みと輪郭の両立を狙っています。発酵は区画ごとに行われ、温度管理のもとで果実味を抽出し、その後フレンチオーク樽で熟成されるのが一般的です。新樽の比率を抑えつつ、香木のニュアンスとタンニンの精度を整える方針が、このワインの格を支えています。2020年は収量面でやや厳しい年とされる一方、凝縮感と緊張感のある仕上がりが期待されるヴィンテージです。

グラスの中の物語、黒果実とスパイスがほどけていく

外観は、縁まで深いルビーからガーネットへと移ろう濃色で、グラスの脚にゆっくりとした粘性が見て取れます。第一香にはブラックベリー、カシス、熟したプラムが立ち上がり、次第にスミレ、甘いスパイス、杉、カカオ、黒胡椒のニュアンスが開いていきます。空気に触れるほど、果実の奥から土や石灰、かすかな乾いたハーブの気配が現れ、香りに立体感が生まれます。口中ではアタックに豊かな果実味がありながら、ただ重いだけではなく、みずみずしい酸が輪郭を与えます。中盤では熟したタンニンが緻密に広がり、黒系果実とローストした樽香が一体化。余韻は長く、ダークチョコレート、リコリス、かすかな燻香を残しながら静かにフェードアウトします。2020年らしい引き締まった構成が、力強さの中に洗練をもたらしています。

食卓を彩る料理、濃密な果実味に寄り添う一皿

このワインは、旨味の強い肉料理と好相性です。たとえば、仔羊のロースト・ローズマリー風味は、マルベックのスパイス感と肉の甘みを引き立てます。牛ほほ肉の赤ワイン煮込み・マッシュポテト添えなら、煮込みのコクとワインの凝縮感が自然に重なります。さらに、炭火焼きのアンガス牛ステーキ・黒胡椒ソースは、タンニンの密度と香ばしさを正面から受け止めてくれます。加えて、鴨胸肉のロースト・ベリーソースや、グリルしたポルチーニ茸のタルトも好適です。チーズなら、ハードタイプのマンチェゴや熟成チェダーのように、塩味と旨味のあるものが合わせやすいでしょう。

メンドーサ州ルハン・デ・クージョとウコ・ヴァレーが映す、砂と光のテロワール

産地の核はアルゼンチン最大のワイン産地、メンドーサ州です。とりわけルハン・デ・クージョのヴィステアルバや、トゥプンガートを含むウコ・ヴァレーは、カテナ・サパータの哲学を理解するうえで重要な地点です。アンデス山脈の雪解け水に依存する灌漑、昼夜の寒暖差、そして砂礫や沖積土壌が、マルベックに厚みと酸の張りを同時に与えます。標高が上がるほど日射は強く、果皮は厚くなり、色調とタンニンの精度が増す一方、夜間の冷え込みが香りの鮮度を保ちます。こうした条件は、単に濃いだけのワインではなく、山の気配をまとった立体的な赤を生み出します。マルベック・アルヘンティーノ2020は、そのメンドーサという大地の広さと繊細さを、一杯の中に凝縮した一本と言えるでしょう。

このワインを深掘る

BUDOU-LOG編集部