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アンデスの稜線に輝く、ニコラス・カテナ・サパータ2019の静かな炎

ニコラス・カテナ・サパータ2019は、アルゼンチン・メンドーサの高地テロワールを映す旗艦キュヴェです。カベルネ・ソーヴィニヨンを軸にした精緻な構成と、熟成を見据えた骨格が魅力で、今飲んでも将来性を感じさせます。

BUDOU-LOG編集部
アンデスの稜線に輝く、ニコラス・カテナ・サパータ2019の静かな炎

アンデスの乾いた空に灯る、2019年の精密な赤い光

Catena Zapataの歩みと、アルゼンチンを変えた名門

Catena Zapata(カテナ・サパータ)は、1902年にイタリア移民ニコラス・カテナがメンドーサで創業した、アルゼンチンを代表する名門生産者です。現在の評価を決定づけたのは、3代目ニコラス・カテナ・サパータ氏が、高地栽培の可能性をいち早く見抜き、アンデス山麓の涼しい畑へと軸足を移したことにあります。特に1980年代以降、標高の高い区画を丹念に調査し、アルゼンチンワインを「大量生産の産地」から「世界基準の銘醸地」へ押し上げた功績は大きいとされています。ロバート・パーカーをはじめとする国際的な評論でも高く評価され、現在ではマルベックの革新者であると同時に、カベルネ・ソーヴィニヨンでも卓越した実績を持つ造り手として知られます。

Nicolás Catena Zapata 2019に込められた高地の設計図

この銘柄は、カテナ・サパータのフラッグシップとして位置づけられる赤ワインで、主にカベルネ・ソーヴィニヨンとマルベックを中心に、年によって少量のメルロやカベルネ・フランが加わることがあります。畑はメンドーサ州のアグレロ、ドゥルティエランゴ、ガティ(Gualtallaryに近い高地区画を含む年もある)など、標高の異なる区画から選ばれる傾向があり、石が多く痩せた土壌が、果実の凝縮と緊張感を同時に生みます。発酵は区画ごとに行われ、温度管理の下で丁寧に抽出されるのが基本です。熟成にはフレンチオークの新樽と使用樽が併用され、樽香を前面に出すよりも、果実・酸・タンニンの三要素を精密にまとめる方針が貫かれています。2019年は、近年の中でもバランスに優れ、濃さとエレガンスが両立した良年と見る向きが多いヴィンテージです。市場価格が約16,000円という点を踏まえても、同クラスの国際銘柄に比べて競争力は高いと言えます。

グラスの中の物語、黒果実と石灰の緊張がほどける瞬間

外観は深みのある濃いルビーからガーネットへ移ろい、グラスの縁にはわずかに紫を残します。粘性は高めで、熟した果実の密度を予感させます。第一香ではカシス、ブラックチェリー、ブルーベリーの黒果実に、スミレ、杉、鉛筆の芯のような清涼感が重なります。時間とともに、タバコ葉、カカオ、黒胡椒、乾いた土、火打石を思わせるニュアンスが開き、アンデス高地らしい冷たいミネラル感が輪郭を整えます。アタックはしなやかで、果実の甘みが最初に広がりますが、中盤からはカベルネ由来の直線的な骨格と、マルベックの豊かな肉付きが現れます。タンニンはきめ細かく、力強いのに荒さは少なく、余韻には黒い果実、スパイス、上質なオーク、そして長く伸びる塩味を伴うミネラルが残ります。今開けても十分に楽しめますが、熟成によってさらに奥行きが増すタイプと評価されています。

食卓を彩る料理、濃密さと香ばしさを受け止める一皿

このワインには、力強さと繊細さの両方を備えた料理がよく合います。たとえば、仔羊のロースト・ローズマリーとニンニクの香り、和牛ほほ肉の赤ワイン煮込み・根菜添え、炭火で焼いた牛フィレ肉のステーキ・胡椒ソース、鴨胸肉のロースト・赤ワインとベリーのソースなどが好相性です。さらに、ポルチーニのリゾットや、香ばしく焼いたラムチョップ、熟成コンテやペコリーノのような旨みの強いチーズも合わせやすいでしょう。ポイントは、料理側にしっかりした旨み、ロースト香、脂のコクを持たせることです。ワインのタンニンが肉の繊維や脂をほどよく洗い、黒果実の風味がソースの深みを受け止めます。

メンドーサの高地、アグレロとガティが描く砂と石のテロワール

産地の核となるメンドーサは、アルゼンチン西部、アンデス山脈の麓に広がる巨大なワイン地帯です。このワインの個性を理解するうえで重要なのは、マイプーやルハン・デ・クージョのような伝統的エリアではなく、より高地で冷涼なテロワールにあります。特にルハン・デ・クージョのアグレロ、またはウコ・ヴァレーのガティヨリ、ドゥルティエランゴ、トゥプンガート周辺の区画は、昼夜の寒暖差が大きく、強い日差しの下でも酸を保ちやすい条件にあります。土壌は砂礫質、石灰質、沖積由来の痩せた地層が中心で、ブドウは水分を求めて深く根を伸ばし、凝縮感のある果実を実らせます。乾燥した気候は病害を抑え、灌漑管理の精度が品質を左右する土地でもあります。こうした厳しい環境が、ニコラス・カテナ・サパータ2019の緊張感と長い余韻を支えているのです。

このワインを深掘る

BUDOU-LOG編集部